売上を減らそう

売上を減らそう

開業して5~7年ぐらいの間は、社員の規模で言うと私含め5~7人程度の規模を行ったり来たりしているころでした。

仕事にはある程度恵まれているものの、新しいスタッフはなかなか定着せず、ベテランスタッフは残り続けてくれていたので数字の面では大きな変化起きませんが、有意識・無意識に会社も私もスタッフも

完全に頭打ち状態に襲われていました。

背景としても、世の中の変化、特にスマートフォンの普及に伴いSNSによる情報量の増加やスマートフォンでの消費(検索予約・注文)、比較仲介サイトの隆盛等で、競合が激化し、新規受注が減り、平均受注単価はジリジリと下がる一方でした。

何より新しい社員がなかなか定着しないため取引先や案件が増やせませんでした。
辞めずに残ってくれているベテランスタッフも常に疲れていて、現場に出るとピリピリし笑顔は決して多くありません。

マンネリもあったのかもしれませんが、ガムシャラにやってきて5年を超えたころから、

あれ?この先は一体どうなっていくんだろう…?

という言い知れぬ不安が私にもスタッフにもありました。

不安を払拭するためにも、売上げにこだわり、落とさないように、仕事があれば今まで通り休むことなく受けて受けて、単価にもこだわりを捨てて受け、新人が入れば一日も早く一人前にすべく指導し、清掃業はこういう厳しい仕事なのだという自覚をより強く、スタッフにも戒めていきました。

振り返ると、完全に悪循環でした。

原点を思い出して

入社してはすぐに辞めていく社員、疲弊したベテランスタッフの顔を見ていて、ある時考えたのです。

「あれ、自分がやりたかったこと、作りたかった会社ってどんなだったっけ?」

という原点を。

  • 手に職を付けることで、働く時は働く=稼ぐ時は稼ぎ、休む時は休む、ワークライフバランスの取れた人生の実現。
  • 先輩スタッフがきちんと指導さえすれば、未経験者であっても真面目で一生懸命でありさえすれば、協力しあって顧客の満足を得て行ける。
  • 働くスタッフがきちんと人生設計が出来る収入を得られる職場。

そういった会社を作りたかったのではないか?と。

もう売り上げは減ったっていいと決意

〈労働環境の整備〉

ガムシャラについてきてくれたベテラン社員も、新しく入ってくる社員にも、まずは労働環境から見直しをしようと決意しました。

まず、望む社員には週休二日制を導入しました。(現在は完全週休二日制に)

週休二日だけでなく、休みたい時は休みを取っていいとしました。

また日付けを跨ぐような夜勤仕事や、繁忙期であっても18時を越えてさらに現場を入れるようなことも辞めました。

労働集約産業である清掃業において、稼働日・稼働時間を減らすことは、即売上げの減少に直結します。

それでもいい、それによってゆとりを持って働けて、社員の定着率が上がるならそれでいいではないかと。

それまでベテラン社員は年間で70日程度しか休んでいませんでしたが、今では社内の年間休日は110~120日になりました。

また、ベテランスタッフにも指導時間にゆとりを持たせ、以前のようにふるいに落とすような指導を止めさせ、新人のペース・自主性を極力尊重した指導をするようにさせました。

〈低単価の仕事を断る〉

今までは休ませるぐらいなら単価が安かろうが稼働させた方が会社としては利益になります。稼働日を減らしたことで受けられる案件数は減少します。
限られた稼働日数の中ではそうはいきません。

しかし繁閑の波が激しい清掃業においては低単価であっても閑散期には手放しがたい案件もあり、閑散期のために休みを削って低単価の仕事をキープしている側面があります。

しかし、それも断ることにしました。

『売上を減らそう』との出会い

当初は休みを増やして労働時間を切り詰めたところで、優しく指導し指導期間を長く取ったところで、割に合わない仕事を減らしたところで、辞める人間は辞めるんだからやるだけ損だという疑心暗鬼もありました。

売上が減ったって構わないと思っても現実には決心が揺らぐ時がありました。
そんな時、テレビ番組で『売上を、減らそう』の100佰食屋の中村さんの店舗・企業経営の特集を見て、この本に出会いました。

そうだ、これだ、飲食業でも出来ているんだから清掃業だって出来るはずだ、と想いを強くしました。

そこから、当社の経営は

社員の労働環境から逆算した集客と単価設定

をベースにしたものに移行していきました。

それにより、それまで行ったり来たりの頭打ちだった売り上げの壁を徐々に超えて新たな成長軌道に乗せていくことが出来ました

しかし今でも暗中模索をしながらです。
それでも一年一年、少しでも労働環境を整備し、受注単価を上げる取り組みを、まるで薄皮を積み重ねていくように続けています。

このとんでもないムリゲーを実現することが私の役割でありやりがいだと思って今はやっています。

というわけで…

お仕事ください‼

以上です。