そのクレームは誰のもの?
『僕、もうハウスクリーニングの仕事は辞めようと思うんです』
その子は某大手清掃会社〇○○〇のアルバイトを辞めて間もなく、どこにも属さずにとりあえず応援で何度か現場を一緒にしていた子でした。
どうして?聞くと
『人間不信になりました…』と。
まだ私も社員を一人二人しか雇用していない創業間もないころは協力業者さん何名かとよく一緒に現場に入りました。
その子は20代前半で若くして掃除業界に入ったのでキャリアは私より上で、探求心もあり技術も比較的しっかりしていました。
その会社を辞めたきっかけ、人間不信になったというきっかけを聞くと、
ある夏の日にお客様宅でエアコンクリーニングをして、作業終わりにお客様からお茶とお茶菓子を提供され、暑い中ご苦労様でしたね~とねぎらいの言葉をかけてもらい、人柄の良いお客様に当たっていい仕事が出来たなと思いながら営業所に戻ったと。
すると上司から
「おい!お前○○様で一体どんな対応をしたんだ⁉本部にクレームが入っているぞ‼」
と叱られてしまったというのです。
自身はいいサービスが出来たな~とお客様もお茶まで出してねぎらいの言葉までもらって帰って来たのに、一体なぜ?
お客様は内心では怒っていたのか?
なぜその場で言ってくれなかったのか?
掃除の仕上がりは間違いないはずなのに…?
上司に自分はきちんとエアコンを綺麗にしてきたことを説明しても、お客様はご立腹だ、お前に原因があるはずだ、と聞く耳を持ってくれない。
もう人間不信になってしまい、ハウスクリーニングの仕事が怖くなってしまいました…とのこと。
ここからは私の想像です。
- このクレームは誰のものでしょうか?
- お客様は一体何に対して、誰に対してクレームをつけていたのでしょうか?
おそらくお客様は、その子にクレームをつけたのではないと想像します。
彼は若くしてアルバイトで大手清掃会社に入り、若さの吸収力と生来の器用さで見様見真似であっという間に技術を習得しベテラン社員を超えるような腕前になったと言います。
私から見ても技術面で問題はない、むしろよくあの会社でここまで見様見真似で出来るようになったものだと、その素質に舌を巻いたものです。
その子の根の真面目さ・裏表のない人の良さは誰もが認めるであろう憎めない、親しみやすい子でした。
しかしアルバイトゆえに、きちんとした研修を受けていない、もっと言えば、社会人としての研修を受けていないので、
良く言えば【若くて気のいい兄ちゃん】ですが、悪く言うと【バイト感ありありの落ち着きのない子】と見られてしまう面がありました。
身だしなみ、ちょっとしたしぐさ、会話の受けごたえ、サービスマンとしての所作、現場での心配り、養生、説明の仕方等は改善の余地が多々ありました。
お客様はクレームを彼に対してつけたかったのではなく、本部(彼の所属先)にクレームをつけたのだと思うのです。
本当に勝手な想像ですが、おそらくは間違ってないと思っています(←おいっ)。
ここからは私の妄想です。
ちょっと脚色も入れて想像をさらに盛ると(←おいおいっw)、
『こんな若くて将来性のあるいい子に対して、もっと会社としてきちんと研修を積ませて指導をしてあげないとダメじゃないか!?』
という意図で本部に対してクレームをつけたのだと想像を膨らませるのです。
しかし残念ながら本部は、上司は、原因をその子に対して求めて終わってしまった。
ろくに指導も育成もせずに、孤立させ、人間不信になって人材が辞めていく。
このエピソードはハウスクリーニング業界あるあるだと思っています。
以上、やはり、きちんと社員として抱えて、指導育成をしていかなければならないなという想いを深めた、創業期の忘れられない私の半妄想でした。