増長

夏のエアコンクリーニングの繁忙期が来ると思い出すエピソードがあります。

それは、面白いように依頼が舞い込むようになった創業して3年目の夏でした。
「謙虚さが服を着て歩いているような人間が私だ」くらいに思っていた自分が、増長しまくっていました(そう思っている時点で増長)。

増長

最初は嬉しくて仕方がなかった仕事の依頼でしたが、スケジュールはあっという間にパンパンになるので、電話の半分以上はお断り。
電話が鳴ると「ヤレヤレ、また断ることになるのかな…」という気持ちになっていました。

そんな時、その日の最後の施工を終えて帰路につく途中、電話が鳴りました。

『もしもし、今日19時に来てくれるんですよね?待っているんですが…』

と男性の声。

ドキッ…

その声を聴いてハッと思い出しました。
前日の夜に『なんとか明日、遅くなってもいいからエアコンクリーニングをしてもらえないか』と粘りに粘られて、渋々引き受けてしまったお客様の案件でした。
ちょうど同じような帰り道の電話だったため、依頼を受けた後、スケジュールアプリに追加しておくのを忘れて、失念してしまっていました。

電話口で私は

「あ~はいはいはい、昨日お電話でお受けしてましたね~、申し訳ありません、失念しておりましたスミマセン~。今日はもう帰路についてしまってるんです~。」

繁忙の続く疲れと、忙しさによる変なテンションもありましたが、私は悪びれることもなく、半笑いでそう答えました。

少しの沈黙の後、お客様から

『え、なんでそんな笑った感じで言ってるんですか?おかしくないですか?確かに急な依頼で無理を言いましたが、信頼できる業者さんだと思ってお願いしたんですよ。限られた時間を確保してこっちは待っているんですよ?』

と怒りを押し殺した口調で言われました。

やっとそこで私は我に返り、事の重大さに気づきました。

依頼をすっぽかしてしまったこともさることながら、私はなんという態度を取ってしまっていたのか…。

「大変申し訳ありません!よろしければ今からでも伺わせていただきますがいかがでしょうか?」

平謝りをして、訪問させていただくことに。

依頼主のお部屋に着いてみると、そこはデザイナー事務所?アトリエ?的なオシャレな空間でした。

お客様はムッとされた表情も『お願いします』と促され作業を始めました。

作業が終わり、改めてお詫びをすると、お客様が淡々と私にお話ししてくれました。

『私も個人でフリーのクリエイターとして仕事をしているので、依頼の大切さ、期日や約束したことっていうのは本当に重要だと思うんです。確かに急な依頼でしたが、コジワンさんはそういうところをわかってくださる業者さんだと思って依頼したので、あの電話の対応は本当に残念でした』

『ミスはあると思うんですよ。でもミスした時の対応こそ大事じゃないですか?』

『自分も調子に乗ってた時期あって、お客様に不遜な態度取ってどん底落ちた経験あるんで、余計なお世話かもしれませんが言わせてもらいます』

と言われました。

10は歳下かと思われる依頼主に滔々と諭されました。
若くして個人事業主としてご苦労されてきた先輩でした。

自分でもなんであんな態度を取ってしまったんだろうと後悔しましたが、端的に調子に乗っていたというしかありません。

依頼のありがたみ、お客様への感謝、仕事に向きあう謙虚さ、こういったものこそを大切にしたいと自分に課して創業したはずが、事業の順調さに完全に見失っていました。

言わなくてもいい言葉をあえてかけてくださったお客様。それに気づかせてくれる機会を与えてくださって本当に感謝です。

夏の繁忙期を迎えると思い出す、本当に忘れられないエピソードです。

そんなエピソードを踏まえまして、

お仕事ください!

を結びの一言としたいと存じます。


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