雇用に対する覚悟 Part 1
「そろそろ独立することも視野に入れてだな…」
私がベテランスタッフにそう提案をするとそのスタッフは不安そうな目で私に問いかけました。
『社長、私を見捨てる気ですか?』と。
創業して2年目以降、一人、また一人と雇用を進めて、古参と言えるスタッフが3名いました。
雇用当初の私は、いつかこの子たちを独立させて立派にやって行けるように育ててあげるのが私の責務だと思っていました。
社員の独立こそゴール?
お掃除ビジネスにおいて、作業員を正社員雇用し続ける難しさは単に育成の問題だけではありません。詳細はまた別のブログであげますが、年金・健康保険・雇用労災といった社会保険料、車輌管理費、福利厚生、ここはわかり難いかもしれませんが消費税も重くのしかかり、雇用維持にかかる付随費用は給与以外に様々な費用が発生します。
したがって、ある意味では独立して協力業者になってもらうことで、本人も収入アップ、会社も付随する費用が抑えられ、ウィンウィンになります。
何より、社員が独立して事業主になることでモチベーションアップにもつながり、より仕事に責任感や真剣さが増すことが期待されます。
私の中で当然のように、ベテランスタッフをどのタイミングで独立させるか、それが彼らのためであると思って疑いませんでした。
独立させることは自分(私)のためだったことに気づく
しかし、独立させよう、させようとする私の気持ちが高まるほどに社員との溝は深まる一方でした。
何度か、それが君たちのためになること、今後のやりがいになることを説明しながら意向を確認しようとしましたが、その度に噛み合わず雰囲気はギクシャクしたものになりました。
ある時、そのスタッフから冒頭の言葉を投げかけられました。
『社長、私を見捨てる気ですか?』と。
その時、私はハッとしました。
私は彼らのためにと思って投げかけていたつもりですが、その実、彼らを将来に渡って雇用し続けることに対する不安や責務から私自身が早く逃れたがっているだけであることに気づいたのです。
それを彼らは見抜いていたのです。
私はそれまでベテランスタッフに対して感じる不満は、作業のマンネリ化や頭打ちになった給料収入がモチベーションの低下が原因だと思っていました。
実際はそうではなく、私の雇用に対する覚悟の無さが、社員の未来に対する不安を助長し、社内の停滞感を生んでいたのです。
彼らに独立の覚悟を問うておきながら、私自身の雇用維持に対する覚悟の無さを見抜かれていたのです。
そのことに気づいたことが、私の、会社の一つの大きな転換点となりました。