ハウスクリーニング業界の現実・実情(大阪目線)

まず、ここに書くこと(本サイトの記事全体に言えることですが)は、あくまでも私の個人的な経験によるものであり、大阪・神戸・奈良・京都での地域性も加味していると前置きしておきます。


不景気に新規参入の多い業界

掃除用品や清掃機械を専門に扱う商社(販売店)があるのですが、そこで聞いた話によると、不景気で世間ではリストラだなんだと言われると商社は売り上げが伸びるそうです。

これは不景気で残業代が出なくなったりして会社からの給料が落ちたり、リストラされたり、現職で先の展望が見えなくなったりして、脱サラをしてハウスクリーニングの業界で起業・独立開業を目指す人が増え、結果として掃除用品が売れる、という傾向があるそうです。

なぜ不景気になるとハウスクリーニング業界への新規参入が増えるのか?

これは、ハウスクリーニング業界への参入障壁の低さがあります。

ハウスクリーニングを開業するために特別な資格は必要ありません。これに類する国家資格もありません。
フランチャイズを展開する会社や有志のグループが勝手に作った〇〇協会による〇〇免許、〇〇認定、のようなものは有ります。それらの権威や効果、世間的な評価・認知度がどこまであるかはわかりません(笑)

そのため「冷やし中華はじめました」よろしく、「ハウスクリーニングはじめました」と言えばだれでも始められてしまう職業のため、気軽に始めようとする人が多いということでしょう。

また仕事の性質上、それほど高価な道具や材料が必要無いですし、自分が行うサービス(作業)によって対価を得ますので、何かを仕入れるお金が必要になるような販売業と異なり大した原価はかかりません。そのため低予算で開業・運営が出来るのでリスクが少ない中で始められるメリットがあるためでしょう。


「いわゆるハウスクリーニング」はやってはいけない

一般家庭にご訪問して水回りの清掃をするような「いわゆるハウスクリーニング」をイメージしてこの業界で独立開業を目指そうとする方が多いのではないかと思います。
また、ハウスクリーニングのフランチャイズを展開する起業もそのような、一見華やかなイメージをもつ「いわゆるハウスクリーニング」を前面にアピールしたフランチャイズ募集広告を打ち出しています。

私個人の経験と同業他社の状況を見ますと「いわゆるハウスクリーニング」のみで生計を立てることは非常に困難と言えます。
個人事業主の方で事業主お一人またはご夫婦でやられている方で「いわゆるハウスクリーニング」のみで上手くやっている方は見受けられます。それでも上手く軌道に乗せてやられているのはほんの一握り、ごくごく一握りです。

この業界で独立開業を目指す方は、ほとんど個人の方だと思います。ビルメンテナンス業でないかぎり、いきなり会社組織で立ち上げて…という人はまずいないと思います。
別項のハウスクリーニングの市場でも説明しましたが一口にハウスクリーニング(清掃サービス)といっても市場は様々です。ただ、どの市場でも言えることですが、清掃サービス業の市場で「儲ける」ことは非常に困難です。

儲けてやろう!と思ってこの業界に参入し、独立開業しようと考えられている方には
「ハウスクリーニングはやってはいけない」というアドバイスを私は送ります

「いわゆるハウスクリーニング」だけに着目してそれで事業を成り立たせようとすると非常に苦労することになるでしょう。
個人事業主の方が生活が成り立つくらいの収入が得られるレベルに達すれば、それで大成功と言えます。先々の不安無く収入にゆとりが出るくらいに経営が安定している状態になるにはよほどの努力や工夫、根気が必要だと言えます。

もちろん何を持って成功というかは個人の価値観によるので一概には言えませんが、例えば…

  • 「低資金で簡単に始められて、ランニングコストはかからずすぐに食べていけるようになるらしい」
  • 「ハウスクリーニングは儲かると思って始めようと思った」

このような考え方でこれからこのハウスクリーニングの業界で独立開業を考えている方からすると、なぜ?どうして?「いわゆるハウスクリーニング」で生計を立てることがどうしてそんなに難しいの?という疑問を持たれるかもしれません。

それについては別項で説明したいと思いますが、それくらい厳しい業界で、かつ「いわゆるハウスクリーニング」が持つ華やかイメージとはかけ離れた業界だと言えます。


「洗い屋」さんの売上と収入

平均的な売上

ハウスクリーニングの市場」の項で説明しましたが、ビルメンテナンス業以外のこの業界の事業者はほとんどが「洗い屋」さんです。

個人の洗い屋さんの(大阪の)平均の売上は大体50万円前後/月です。

これが個人で軌道に乗ったと言える方の売上です。

(これはあくまでも私の周囲で知る限りの大阪目線の情報と前置きしておきます。関東の方は作業単価相場が2~3割高いと思います。)

ランニングコストの目安

確かにこの仕事はランニングコストは低く済みます。
開業時の立ち上げ資金は別として、自動車の維持費(自動車税・自動車保険・車検代・修理メンテナンス)、駐車代、ガソリン代、高速代金、洗剤や道具等の消耗品代、宣伝等のコストはおおよそ15%程度で済みます。

その他は約15%が各種の保険料や税金です。所得税、住民税、健康保険、社会保険、損害賠償保険、そして事業主は労働保険に入れませんので必要に応じて別途生命(傷病)保険の加入も必要でしょう。

また仕事を取る(集客)ための宣伝広告費をどこまでかけるかにもよりますが、ざっくりですがランニングコストは売上高のおおよそ30%程度です。

正味の収入

したがって正味の利益=収入は35万円前後が平均と言えます。

(関東はこの2~3割多いのでは?と思いますが、家賃相場や物価の違いもあるのでしょうが間違いなく関東の方が単価はいいですね、関東相場が羨ましい…)

しかしこの軌道に乗ったと言える業者さんも、例えば事務所(倉庫や仕事場)を構えていて自宅とは別に家賃がかかっている、自宅だがローンの返済がある、と言ったケースもあるでしょう。またサラリーマンであれば会社がやってくれることも自分でやらなければならい、開業時に買い揃えた営業車や高額機械の買い替に備えて引き当て(月々の積立)もしていかなければなりません。
そうなると独身であればまあまあ…ですが、扶養する妻子がいて…となると「なんとか食べていけるが…」というレベルの収入だと言えます。

それをどのように実現しているか

  • 稼働率
    前述の売上平均を実現されている「軌道に乗った」同業者さんの稼働状況を見ると、

    休みは週一とれればいい方で繁忙期は月に1日休むかどうか

    早朝家を出て帰りは夜間まで
  • コストダウン
    宣伝広告費を掛けずに特定の元請を確保して下請けに徹する
    家賃のかかるような事務所も構えない
    万が一の賠償保険や傷病保険には入らない
    各種の社会保険や税金は申告しない=もぐり化

といったことでコストを抑えます。

「もぐり」とは公には無職・無収入ということで、隠れてこの仕事をして収入を得ている状態のことです。
もちろん、税金逃れで違法ですね(笑)でも本当に結構います。

この仕事の怖いところは、事業主が身体を壊したら収入が無くなってしまうと言う怖さがあります。本来そういう時のために傷病保険や各種の事業主向けの保険に加入するのですが、そういったコストを掛けられない(掛けたくない)個人事業主も多くいます。

「洗い」を主業とする「洗い屋」さんの実態についてはまた別項で詳しく紹介します。

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