開業時、どう集客し顧客開拓するか?より大切なこと

ハウスクリーニングで独立開業間もなくの私は、当然のごとく毎日仕事がある状況には程遠く、唯一固定の仕事ととしては、妻の親戚筋のマンションオーナーの管理物件の日常清掃を手伝わせていただくことでした。
そのころ、自分なりに色々と仕事を確保すべく集客をしようと試行錯誤していましたが、なかなかお仕事の依頼はいただけない状況にモヤモヤと焦る日々でした。

''「仕事が欲しい、仕事が欲しい、取引先を増やしたい…」
そんなことばかり考えていました。''

そんな時にオーナーさんから言われた言葉に、自分のくだらないプライドを粉々にしていただいたエピソードをご紹介します。
それは開業時は、どうしても早く仕事を獲得したい、顧客を開拓したいという気持ちが先行してしまいますが、それよりも大切なことがあるということに気づかせてくれたエピソードでした。

プライド粉々エピソード

そうです、当初私はコネでいただいた仕事だけで糊口をしのいでいました。
そのマンションの日常清掃は私だけでなく、パートの高齢の男性の方や、女性もおり、複数の方が日替わりで入っておりました。

コネでいただいた日常清掃も最初のころは精を出していましたが、パートの男性や女性の方に交じって、高度な技術を要するような作業は無く、心のどこかで

「パートさんのする仕事でわざわざ自分のやる仕事じゃないよな~」
「もっと高い技術やいろんな道具を使った仕事を取りたいな~」

と考えながら、身の入らない作業をしていました。

そんな時、清掃の様子を見に来られた女性オーナーから

『田中さん、よかったらこの後一緒にお昼ご飯でもどう?』

と誘っていただきました。

日常清掃の後に仕事などあろうはずが無かった当時の私ですが、さも仕事の都合があるかのように間をおいて

「そうですね…(スケジュールを確認するフリ)、はい、大丈夫です!」

と答えてご一緒することに。

『ここの料理は食べるとエネルギーが湧くのよ』

と勧められた美味しい料理をご馳走になった後、オーナーから質問されました。

『田中さん、この仕事始められて、今どう?今後どうやって行こうと考えているの?』

と。

私はとうとうと、今やっている集客の施策や、どういった顧客を開拓して、どういった価格帯・仕事内容を受注していこうとしているか、先々の会社の構想等を説明しました。
どこかで現状で仕事がろくに確保できていない状態の自分を見透かされているようで、取り繕うかのように言葉を重ねて説明しました。

ひとしきり私の説明を黙って聞き終えたオーナーが言いました。

『田中さんは今、そういう時期じゃないんじゃないかな?』

え…!?

『こういう仕事がしたい、こういうお客様の仕事が欲しい、単価がどうとか、選ぼうとしている時期じゃないと思うの』

そう言われた瞬間、カーッと顔に熱が上がってきて赤くなってしまったのではないかという気がしました

『今はまだ会社の先のことをどうこう、単価がどうこうよりも仕事やお客様を選ばずに、いただけるお仕事は何でもがむしゃらに受けて、こなして、技術やノウハウ・経験を積んで、まずは自分を向上させる時期だと思うわよ』

マンションを複数棟管理されているオーナーは、様々な建築系の職人さんや清掃に携わる職人さん、パートさん、親方・経営者の方たちを長年に渡って見てきている方でした。
そんなオーナーから見たら当時の私などは、技術を経験もないくせに、仕事を選り好みして、目先の仕事に本気で取り組めていないと感じられたに違いありません。

『あなた、このままじゃあこの仕事で食べていけるようにならないよ。まずはあなたが一人前の職人になるのが先よ。』

ということを暗に気遣って伝えていただいたのでした。

私はカーッと赤くなった顔から一転、一気に血の気が引くように、自分のくだらないプライドが砂のように粉々になってサーッと落ちていく心境になりました
何か喋ろうとしましたが、声が震えそうになるのをこらえるのが精いっぱいで言葉が出ませんでした。

『頑張ってね』

とお店を出て、去り際に声をかけていただき、かろうじて「ハイ、ありがとうございました」と礼を言い、頭を下げて別れました。


このエピソードは、開業当時のいろんな苦い思い出がある中で、もっとも最初で、忘れられない、そしてこれが無かったら今の自分は無いなと思えるエピソードの一つでした。

このオーナーさんのおかげ、初心に戻れてこの仕事に本気で取り組み始めることが出来ました。自分のくだらないプライドを捨てて、どんな内容・単価の仕事でも全力で取り組み、技術やノウハウを吸収していけたなと思います。

当時の私など、オーナーさんからしたら、数ある業者の一つとして切ってすげ替えてサヨウナラでもよかったのに、暖かい気遣いをいただき感謝してもしきれません。

不思議なことに、このエピソードの後に「そうだ、今はとにかく経験を積む時期だ、なんでもやってやるぞ」「自分に今必要なことはひたすらに現場を叩いて(経験して)、一人前の職人として成長することだ!」と思えた時から、徐々に仕事に恵まれるようになりました。